放射線治療科

研究

患者さんの情報の研究利用に関するお知らせ

放射線治療科では,下記の研究課題に関して,検査で取得される患者さんの情報を利用することがあります.研究の概要,患者さんの情報の扱いについては,こちらを御参照ください.

研究内容のご紹介

悪性腫瘍には種々な治療法が適用できますが、腫瘍の部位、組織型、病期および患者さんの背景等を考慮して選択されます。最近は治療後の生活の質(Quality of Life:QOL)を十分に考慮した治療が重要視され、機能と形態を保つことができる放射線治療の役割は一層重要になってきています。放射線治療は腫瘍組織に最大限の損傷を与え、正常組織障害を最小限に抑えることを目標としています。その目標を達成するためには,癌細胞,正常組織の放射線感受性、そして、放射線による傷の修復メカニズムの解明が必要と考えています。現在,当教室では染色体異常解析からみた放射線感受性に関する研究と癌細胞の放射線増感効果を高める研究を行っています。

1. 放射線による損傷修復に関する研究

放射線は細胞核内に存在するDNAにさまざまな損傷を与えますが、そのなかで、最も致死的損傷はDNA二本鎖切断です。DNA二本鎖切断が生じると細胞は速やかに傷を修復しますが、不正確あるいは不完全な修復がおこれば、細胞死にいたります。放射線の標的であるDNAの初期損傷および修復能を個体、細胞、分子レベルで正確に評価することは、癌細胞に対する放射線効果、そして、周囲の正常細胞防護を考える上できわめて重要です。

当教室では放射線によるDNA二本鎖切断および修復を正確に反映すると考えられている、染色体異常解析から放射線治療効果および正常組織の防護を予測する研究を行っています。染色体損傷は顕微鏡で観察可能です。

図1は、蛍光色素を用いて、特定の染色体(図では1番、3番の染色体を赤と緑、その他の染色体は青)を染めたものですが、X線照射により誤った修復が起 こっていることがわかります。どのような照射方法、そして、放射線の効果を高める薬剤(抗がん剤、放射線増感剤)を使用した際に、癌細胞により多くの染色 体損傷が導かれるかを検討しています。

図1.Radiat Res.159:597-603 (2003)より引用

図1.Radiat Res.159:597-603 (2003)より引用

2. 重粒子線における基礎研究

最近、X線治療では治りにくい癌に対する治療方法として重粒子線治療が注目されていますが、千葉県稲毛市に存在する放射線医学総合研究所とも共同研究を行い、重粒子線の生物効果、腫瘍抑制効果の検討を行っています。
図2で、粒子線治療として使用されている炭素線に照射された細胞の染色体損傷を提示します。これは粒子線治療で使用されるエネルギーの炭素線による染色体 損傷を写真に撮ったものですが、染色体に多くの損傷が引き起こされています。X線では同じ線量ではこのような激しい損傷は見られず、粒子線治療の効果を示唆するものと考えられます。
粒子線の生物効果の解析は宇宙飛行士の放射線影響を考えるうえで不可欠な研究課題であり、米国のNASA Johnson Space Centerとも共同研究を続けています。また、放射線の損傷修復に関わる遺伝子の同定、その役割を染色体解析および分子生物学的手法を用いて解析しております。

図2.

図2.

 

3. 前立腺癌に対する根治放射線治療の治療関連有害反応に関する後ろ向き観察研究

 前立腺癌に対する放射線治療には①外部照射、②小線源治療、③外部照射併用小線源治療といった複数の治療選択肢があります. これらの治療法のうち、いずれかが他に比べて優れているというエビデンスはこれまで確立されていない状況であり、照射方法による遅発性有害反応発生様式の違いを理解することは、複数の選択肢のなかから治療法を決定する際に非常に重要と考えられますが、異なるの照射方法を用いた際の遅発性有害反応の発生率の違いについて十分なデータは得られていません。
 そこで、本研究では、各治療方法による遅発性有害反応の発生様式の違いを明らかにすることを目的として、対象となる方の治療前の前立腺癌や合併症の状態、前立腺癌に対する治療の内容、治療後の経過に関しまして、診療録、画像データなどの記録を参考に調査致します。
 本研究におきましては、対象となる方の、治療前の前立腺癌や合併症の状態、前立腺癌に対する治療の内容、治療後の経過に関しまして、診療録、画像データなどの記録を参考に調査致します。従いまして、皆様に新たなご負担をおかけすることはありません。 
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4. 4次元放射線治療計画装置を使用した放射線治療の新展開
-4次元CTを用いた標的腫瘍ならびに正常臓器の動態に関する後ろ向き観察研究-

 本研究は、上腹部消化器悪性腫瘍に対する高精度放射線治療に際して、目標とする病巣と正常臓器の位置の変化を明らかにすることを目的とした調査です。放射線治療計画時に呼吸同期による4次元CTを施行することで、放射線を照射する範囲が縮小され、治療効果を損なうことなく少ない毒性で放射線治療が施行できると期待されております。肺、肝臓の悪性腫瘍に対する定位照射(ピンポイント放射線治療)で比較的多く行われておりますが、上腹部悪性腫瘍(膵癌、胃癌、胆管癌など)においては詳細な報告は得られておりません。これらを明らかにすることは、上腹部悪性腫瘍の放射線治療成績の改善につながると考えております。本研究におきましては、対象となる方の治療前の上腹部悪性腫瘍の状態、治療の内容、治療後の経過に関しまして、診療録、画像データなどの記録を参考に調査致します。
 本研究におきましては、対象となる方の、治療前の悪性腫瘍の状態、治療の内容、治療後の経過に関しまして、診療録、画像データなどの記録を参考に調査致します。従いまして、皆様に新たなご負担をおかけすることはありません。
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5. 食道癌に対する放射線治療・化学放射線治療の治療効果と有害事象及び予後因子に関する後ろ向き観察研究

 食道癌に対する放射線治療は、古くから行われており、これまで治療効果や副作用について多くの報告がなされてきました。化学療法(抗がん剤)を放射線と同時に使用することで放射線治療の効果が高まることが、複数のランダム化比較試験で報告されています。その一方で、化学療法と放射線療法を同時に行うと副作用についても強くなることが予想されますが、その長期的影響についてはよくわかっていません。
 本研究は、食道癌に対する放射線治療・化学放射線治療を行うことによる治療効果と副作用、治療後の経過を明らかにすることを目的とした調査です。これらを明らかにすることは、食道癌の効果的な治療選択と治療成績の改善につながると考えております。
 本研究におきましては、対象となる方の治療前の食道癌の状態、治療の内容、治療後の経過に関しまして、診療録、画像データなどの記録を参考に調査致します。
詳しくはこちらをご参照ください  

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