診療

体幹部定位放射線治療

通常の放射線治療と違い、狭い範囲のみを治療するため、副作用が少なく、肺機能が低下して手術のできない方にも施行可能です。ただし、治療の精度が要求されるため長時間(通常30分~1時間程度)の安静臥床が可能なことが条件となります。

適応疾患

下記の疾患が治療の対象となります。腫瘍径が3-4cm以下で他の臓器に転移がないこと、病変の数が少ないこと(1~3つまで)が原則となります。
病変の大きさや数が条件を満たしていても、病変の存在する位置や過去の治療歴によっては治療の適応外となることがあります。

肺癌
原則として癌の確定診断のある径3-4cm以内の肺癌で他に転移のないものを治療しています。リンパ節などに転移が無いことが条件ですので事前にPET検査等を施行することがあります。
転移性肺腫瘍
原則として、原発巣が制御されており、そのほかの転移のない径3-4cm以内の転移性肺腫瘍が対象となります。また、サイズが小さくても多発性の肺転移は対象外となります。
肝腫瘍
腫瘍径が3-4cm以内で転移のない原発性肝癌、もしくはほかに転移がなく腫瘍径が3-4cm以内で3個以下の転移性肝癌が対象となります。

治療の流れ

治療前診察

定位放射線治療の適応があるかどうかを判断するために診察・問診を行います。
病変の種類や大きさ、位置、治療の既往などの情報が必要となります。他院からの紹介の場合は、紹介状や画像検査等の情報をお持ちください。
場合によっては追加での検査を行うことがあります。

固定具の作成

治療の際には、治療ごとに照射位置がずれてしまわないように、定位放射線照射用体幹部固定具を用いて治療計画及び毎回の治療を施行しています。
照射時の体の固定精度・位置の再現性を向上させるため、ボディフレームという枠を使用し、患者さん一人ひとりの体形に合わせて型取りをした固定具を作成します。
この固定具は真空にすることで形を保持するクッションのようなもので、治療時の姿勢を一定に保つことで位置の再現性を高めます。

治療計画

上記の固定具を使用し、治療計画のためのCTを撮影します。このCTは呼吸に伴う腫瘍の動きに対応するため、通常の診断用のCTとは異なる方法でで撮影します。そのため、撮影終了までに通常のCT撮影よりも長い時間(通常30分程度)が必要です。
また、治療計画CTを撮影する前に、レントゲン透視下で腫瘍の呼吸性移動を評価し、必要に応じて呼吸同期照射(後述)などの対策を講じます。

照射の実施

上記の治療計画をもとに、実際の治療を行います。毎回治療実施時には照射の直前または照射中に、IGRT技術を用いて治療計画通りの位置が正確に再現できているかの確認をしてから治療を実施します。
肺癌であれば典型的な照射法は、三次元照射で、1日12Gyで4回から5回照射する分割照射法をおこなっています。病変の種類・部位によってはそれ以上の治療回数になることもあります。
一回当たりの治療時間は30分~1時間程度かかります。呼吸同期(下記)の有無によっても治療時間は変化します。

呼吸同期

肺癌などの体幹部の腫瘍は照射中の呼吸により常に移動しています。このため、標的に正確に狙いを定めることが難しくなります。
そのため当院では、呼吸による位置の変動が大きい場合、呼吸による胸部の動きを監視しながら一定の範囲内に入ったときのみ放射線を照射する呼吸同期照射という方法をとっています。これにより呼吸変動の大きい場合も定位照射を行うことができますが、呼吸の周期の一部でのみ照射を行うので、一回当たりの治療時間が長くなります。 また、安定した一定の呼吸が続けられない方には使えないことがあります。

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