診療

前立腺癌永久刺入密封小線源療法

前立腺癌永久刺入密封小線源療法は、早期前立腺がんに対する治療法の一つです。
手術などに比べて身体的負担が小さく、治療に要する入院期間も短いため早期に社会復帰ができる、といったような特徴があります。
当施設でこの治療を行う場合、治療には通常4日間の入院が必要です。
ご希望の方は、慶應義塾大学病院泌尿器科・放射線科を受診してください。

前立腺永久刺入密封小線源療法について

密封小線源療法とは

密封小線源療法とは、放射線同位元素を封じた小さな線源を体内に留置することで、がんの内部・あるいは近傍から放射線を照射する治療法のことです。
放射線は留置された線源の近傍にのみ強く照射されるため、比較的副作用が少なく、かつ高い効果を持つ治療法です。
この治療は、線源刺入の前後数日間の短い入院期間で治療できることも利点としてあげられます。

使用する線源

前立腺がんの場合は、ヨウ素125(I-125)と呼ばれる放射性同位元素を密封した長さ5mm、直径1mm程度のチタン製カプセルを用いて治療を行います。このカプセルのことをシードと呼ぶこともあります。
カプセルから照射される放射線は時間とともに徐々に減少し(半減期:59.4日)、一年ほど経過するとほとんど周囲への影響を考える必要はなくなります。
放射性同位元素は堅いチタンのカプセルに封入されているため、尿、便、汗、唾液などの分泌物には放射能が漏れ出すことはありません。
周囲へ照射される放射線量はわずかなものですが、線源刺入後しばらくの間はいくつかの注意が必要です。

前立腺永久刺入密封小線源療法の適応

この治療法は、基本的に前立腺の外への照射線量は高くないため、適応となるのは、前立腺がんの中でも病巣が前立腺内に限局している場合に限られます。
そのため、病巣が前立腺の被膜外や周囲臓器に浸潤している場合、リンパ節や他の臓器(骨・肝・肺など)に転移している場合はこの治療の適応とはなりません。
また、過去に骨盤腔への放射線治療の既往がある場合は治療の適応とならないことがあります。
前立腺が著しく肥大している場合は、必要となる線源の量が多くなり、法律で定められている基準を上回ってしまう可能性があります。こうした場合は、小線源刺入に先立ち、ホルモン療法で前立腺を縮小させる必要があります。

治療に伴う有害事象

小線源治療は重篤な合併症が少なく、性機能障害や尿失禁などは手術より少ないというデータがありますが、下記のような合併症を生じることがあります。

  • 頻尿
  • 尿閉・排尿困難
  • 切迫感
  • 尿失禁
  • 肛門痛

これらの症状は多くは軽度の症状で終わりますが、治療から数か月程度は持続することがあります。まれに排尿時痛や血尿、肛門出血などを生じることもあります。
また、治療後時間(半年~数年)が経過してから、尿道狭窄、排尿時痛、血尿、血便といった症状が出ることがあります。

治療までの流れ

外来受診から治療実施までの間は通常以下のような流れになります。

泌尿器科医によるによる診察、説明

  • 泌尿器科医が診察を行い、各種画像診断、病理診断等を参考に、手術、外照射、小線源治療、ホルモン療法などの治療法からどの治療が適切かを判断します。
  • 小線源治療の適応となれば、治療前検査や治療・入院の日取りを決定します。

プレプラン:治療前計画

  • 小線源治療では、治療に必要な線源を治療の前に事前に用意しておかなければなりません。
  • しかし、線源がいくつ必要になるのかは、患者さんの前立腺の大きさなどによって異なるため、あらかじめどの程度の個数が必要になるのかを予想しておく必要があります。
  • 用意する線源の個数を決定するために、実際に治療を行う前に経直腸超音波検査によって前立腺の大きさ・形を測定、事前に治療のシミュレーションを行います。この作業をプレプランと呼んでいます。
  • プレプランを終え、線源を発注した後は原則として治療のキャンセル・延期はできません。

線源刺入

  • 治療の際には泌尿器科に入院します。通常入院期間は治療の前後4日ほどです。
  • 線源刺入の際は全身麻酔をかけて治療を行います。
  • 経直腸超音波の画像を見ながら、コンピューター上で線量分布を確認しながら線源を配置してゆきます。

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線源刺入後

  • 退院前に周囲への放射線の影響が規定以下になっていることを確認します。もし基準以上の放射線が測定された場合は退院が延期されることがあります。

退院後

  • 退院後は外来で定期的に経過観察を行います。
  • 治療後一か月ほど経過した時点で、線源の配置・線量の分布を確認するためのCT(ポストプラン)を撮影します。
  • 前立腺内に留置された小線源から体の外まで出る放射線は、ごくわずかで、普通の生活であれば周囲の人への影響を心配する必要はありません。ただし、治療後しばらくは妊婦や乳幼児との長時間の接触を避けるなど、いくらかの注意が必要です。
  • 治療後一年間は線源が体内に留置されていることを記載したカードを携帯する必要があります。

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泌尿器科 泌尿器科ホームページ

プレプラン:月曜日
治療実施:金曜日
ポストプラン:木曜日

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