婦人科腫瘍におけるRadiomics研究
当大学産婦人科と共同で、子宮頸癌・子宮体癌に対する治療成績の予測や疾患特性の解明、診断・治療戦略の最適化に関する研究を進めています。Radiomicsは、CTやMRIなどの画像から抽出された数百〜数千に及ぶ画像的特徴量から疾患の予防・診断・治療・予後予測の質を高める研究分野です。さらに、臨床情報や遺伝子情報などと統合的に解析する統合オミクス解析もできます。本研究では、婦人科腫瘍に対して、① 生存率や再発リスクを予測する個別化モデルの構築、② 悪性度分類の高精度化による診断精度の向上、③ 腫瘍微小免疫環境の推定による新たな治療戦略の探索を目指しています。これにより、婦人科腫瘍における精密医療の実現に貢献することが期待されます。

科研費 基盤研究 (C) 研究課題/領域番号: 婦人科悪性腫瘍の精密医療に資する非侵襲的MRIバイオマーカーの開発 / 25K10545 (研究代表者)
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)研究課題/管理番号: Radiomicsを用いた若年子宮体癌の妊孕性温存療法における新たな予後予測バイオマーカーの開発 / 25ck0106066h0001 (研究分担者)
AIと先端技術を活用した肺癌治療効果予測の研究
現在、早期非小細胞肺癌(NSCLC)の標準治療は手術ですが、ピンポイントで病巣を狙う体幹部定位放射線治療(SBRT)も広く普及しています。しかし両者を直接比較したランダム化比較試験は乏しく、それぞれに利点と限界があるため、治療方針の決定には患者さんと医師が十分に話し合うこと(SDM:Shared Decision Making)が重要です。当科では、患者背景や膨大な治療データを基に、生存率・再発率・有害事象を客観的に予測するモデルの開発に取り組んでいます。これによりSDMや個別化医療を支援し、治療成績や患者満足度の向上を目指します。また、研究を支える基盤として、高性能GPUを搭載した研究用ワークステーションを導入し、数理モデル、機械学習、深層学習、生成AIといった先端技術を駆使して解析を進めています。肺癌のみならず、他疾患への応用も視野に入れた研究展開を行っています。

腫瘍動態に基づく適応放射線治療: Dose Painting 戦略の開発
放射線治療は技術革新によって精度が飛躍的に向上してきました。次に求められる課題は、「腫瘍の動態情報をいかに治療に反映させるか」です。本研究では、腫瘍内部に潜む再発リスクの空間的・時間的不均一性を画像解析によって可視化し、その分布に応じて線量を最適化する「Dose Painting 戦略」を開発します。Radiomics を応用し、CT・MRI・PET など日常診療で得られる画像から、人間の目では識別できない再発リスク関連の特徴を抽出します。そして、リスクの高い領域には集中的に線量を配分し、正常組織への影響を最小限に抑えます。これにより、「腫瘍の性質や変化に応じて最適化される適応放射線治療」という新たな標準の確立を目指します。
