研究

IVR(画像下治療)

先々代の平松京一教授は,わが国の血管撮影のパイオニアであり,以来当科は,血管撮影,IVR(画像下治療)において常に国内でもトップクラスの症例数をほこり,臨床,研究において指導的役割を果たしています.

特に肝腫瘍,四肢閉塞性動脈疾患のIVRでは,数々の実績がありますが,近年は非血管系IVRとして,肺癌の凍結治療など最先端の低侵襲治療を手がけ,世界をリードしています.

このほか従来の血管系IVRについても,さらに高度の手技を開発し,臨床各科と密接な協力のもと,患者さんの診断,治療に大きく貢献しています.以下,最新の具体的な研究成果をご紹介します.

凍結治療の温度分布と治療効果に関する研究

呼吸器外科とともに取り組んでいる肺腫瘍に対するCTガイド下凍結融解壊死療法(PCLT)は,局所麻酔下に肺に凍結針を穿刺し,凍結させて腫瘍の壊死を惹起する治療です.世界に先駆けた10年のPCLTの治療経験から,その安全性(J Thorac Cardiovasc Surg. 2006;131:1007-13, Vasc Interv Radiol. 2012;23:295-302, J Vasc Interv Radiol. 2012;23:1043-52),臨床的有効性(PLoS One. 2011;6:e27086, PLoS One. 2012;7:e33223, J Thorac Cardiovasc Surg. 2013;145:832-8, J Vasc Interv Radiol. 2013;24:813-21, BioMed Research International 2014;2014:ID 521691)を報告しています.

研究面では,寒天や豚臓器の凍結針周囲の温度分布を計測し,より効率的に腫瘍の壊死をもたらす方法を探究しています(Low Temperature Medicine 2008:34:23-8, Cryobiology 2010;61:317-26).また,肺にとどまらず,肝臓,腎臓,骨,甲状腺,副腎など,様々な臓器の温度分布の研究が進行中で,血流による治療効果の変化に関しての研究も進行中です.

図1

副腎静脈サンプリングに関する研究

副腎静脈サンプリングは,副腎腫瘍,特に原発性アルドステロン症の診断に欠くことのできない検査で,多くの施設で実施されている手技ですが,成功率は施設によってかなり異なります.平均的には10%程度の困難例があり,その解決策が望まれています.当院では年間50~60例の手技を実施していますが,成功率はほぼ100%です.

困難症例における最大の原因は,副腎静脈の位置を同定できない場合です.通常の経静脈的な探索方法では,しばしば長時間を要し,血管損傷のリスクも高くなります.そこで,我々は動脈からカテーテルを挿入して,CT検査を追加することで副腎静脈の位置を同定する方法を確立し(Jpn J Radiol. 2014;32:630-6),ほとんどの症例で安全,確実,短時間に副腎静脈を同定し,サンプリングを成功させ,患者さんの負担を大きく軽減しています.

現在,片側の副腎腺腫による原発性アルドステロン症の診断が確定した患者様では,手術することなくラジオ波焼灼して治療する臨床研究を開始したところです.

図2:CTで副腎静脈の描出が確認できた例1
図2Aでは術前のCT画像で、右副腎静脈が見えています(矢印)。図2Bでは右下横隔動脈から造影剤を注入しながらCTを撮影し、副腎静脈の位置を確認しており、図2Aと同じ場所に見えています(矢印)。

図3:CTで副腎静脈の描出が確認できた例2
図3Aでは術前のCT画像で、右副腎静脈が見えず,右副腎静脈の位置は不明だった。図3Bでは右下横隔動脈から造影剤を注入しながらCTを撮影し、副腎静脈の位置を確認しており、図3Aでは見えなかった右副腎静脈を同定できる(矢印)。

図4:実際の副腎静脈サンプリング検査で行われた例
副腎静脈サンプリング手技中に、右副腎静脈の位置が不明であったため、右腎被膜動脈から造影剤を注入しながら血管撮影を施行(図4A)。同じ血管から造影剤を注入しながらCTを撮影したところ2本の右副腎静脈(矢印)が観察された(図4B).副腎静脈の位置と走行が判明したため、これに形状の合うカテーテルを用いて、副腎静脈の選択に成功した(図4C,D).

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