研究

循環器

循環器画像診断は,2000年以降にCTやMRIなどの非侵襲的検査法が急速な進歩を遂げました.2000年に教授として赴任した栗林幸夫の専門が循環器であったことから,当科は心臓CTに黎明期から関わり,撮影法,造影剤投与法,画像表示法,被曝低減などの検査法の確立および診断能の検討をおこなってきました.冠動脈CTの表示法として国際的に広く用いられているAngiographic viewは,当科から発信したものです (Circ J. 2006;70:1661-2[→], Circ J. 2009;73:691-8[→]).最近ではattenuated plaqueなどの不安定プラークの研究も行っています(Circ J. 2012;76:1182-9[→]).多くの多施設共同研究にもかかわっており,国際的には,CT潅流画像での虚血の診断能を検討したCore 320 study (Eur Heart J. 2014;35:1120-30[→], Circ Cardiovasc Imaging. 2015;8:e002676 [→], Radiology. 2017;284:55-65[])やCTでのfractional flow reserveの診断能を検討したNXT trail(J Am Coll Cardiol. 2014;63:1145-55[→]),国内では経静脈投与β-blockerの有用性に関する多施設共同研究 (Int J Cardiovasc Imaging. 2013;29 Suppl 1:7-20[→])などを担い,心臓CTのエビデンスレベルの向上に貢献してきました.また,2倍の空間分解能をもつ実験機CT,2重エネルギーCT,4次元CTのような新技術の応用研究も行っており,基礎から臨床まで幅広い研究を行っています (Phys Med Biol. 2011;56:5235-47[→], Circ J. 2012;76:1799-801[→], J Cardiovasc Comput Tomogr. 2014;8:391-400[→]).

心臓MRIでは,一般的に行われる心機能評価や遅延造影による心筋性状評価に加えて,心筋虚血の検出や,肺高血圧症や先天性心疾患術後における右室機能評価に,MRIが有用であることを検証してきました (Circ J. 2012;76:1737-43[→]).また,新しい3Dシネ(動画)撮像法により,検査時間を短縮する試みも行いました (Magnetic resonance imaging. 2015;33(7):911-7. 図3).近年では,4D flow による3次元+時相ごとの血流量・流速解析や(図4),心筋T1マッピング(図5)などの撮像技術を取り入れ,あらたな心大血管領域の画像評価に取り組んでいます.

現在は,大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)(Int J Cardiol 2016;222:738-744 [], Am J Cardiol 2017;119:1100-1105 [], Eur Radiol 2017;27:1963-1970 []),慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)に対するバルーン肺動脈形成術 (BPA) (Int J Cardiol 2015;194:39-40 [], Ann Am Thorac Soc 2015;12:1417-1419 [], EuroIntervention 2015;11:e1-2 [], Int J Cardiol 2016;203:1016-1017 [], Int J Cardiol 2017;243:538-543 []),薬物治療抵抗性の閉塞性肥大型心筋症に対する経皮的中核心筋焼却術(PTMSA)(Int J Cardiol 2014;172:e79-81 [], Int J Cardiol 2014;176:e131-132 [], Int J Cardiol 2015;181:349-350 []. JACC Cardiovasc interv 2015;8:e201-202 [])など,近年注目されているStructural Heart Diseaseに対する循環器画像診断の研究が進行中です.

また,我々は下記のように,日本循環器学会の冠動脈病変の非侵襲的診断法に関するガイドライン,大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン,アジア心臓血管放射線学会の心臓CT,心臓MRおよび造影剤に関するガイドライン,日本放射線医学会の画像診断ガイドライン(循環器分野)など多くのガイドラインの執筆を担当しています.

 

 

図1. Angiographic view
侵襲的冠動脈血管造影の撮影角度と同じ、冠動脈CT画像の表現方法.心臓CT黎明期に、循環器内科医にとっても、冠動脈CTの理解が容易となり、世界的に広まった表示方法である.

図2

図2. Plaque-Loaded Angiographic View
矢印の部位に閉塞があるが、同部のプラークを、プラークのCT値により色分けすることで、脂質豊富なプラークなのか、繊維性のプラークなのか、石灰化プラークなのかがある程度区別が可能である.これにより、カテーテル治療の際、容易に開存させることのできる病変なのか、開存が難しい病変なのかの判断に有用な情報が得られる.

 

図3 上段2D法,下段3D法シネ.従来は1回の息止めで1~2断面しか撮像できなかったが,3D法では1回の息止めで左室全体をカバーできるため,検査時間短縮に寄与すると考えられる.撮像を高速に行う分,ぼけなどの画質劣化がみられるが,心機能解析結果や壁運動評価には影響はなく,臨床上,有用である.

 

大動脈二尖弁の患者様の大動脈 4D flow.二尖弁では,上行大動脈内に螺旋流が生じており,その後の動脈拡大や瘤形成との関連が示唆される. 

図4 大動脈二尖弁の患者様の大動脈 4D flow.二尖弁では、上行大動脈内に螺旋流が生じており、その後の動脈拡大や瘤形成との関連が示唆される.

 心筋T1値計測.反転回復法を用いるMOLLI法が主に用いられるが,飽和回復法の一つである SMART1Map法も利用可能である.飽和回復法は反転回復法に比べて計測結果のばらつきが大きいが,より真値に近い結果が得られると考えられている.

 

図5 心筋T1値計測.反転回復法を用いるMOLLI法が主に用いられるが,飽和回復法の一つである SMART1Map法も利用可能である.飽和回復法は反転回復法に比べて計測結果のばらつきが大きいが,より真値に近い結果が得られると考えられている.

 

執筆に関わったガイドライン

1. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2007−2008年度合同研究班報告)- 冠動脈病変の非侵襲的診断法に関するガイドライン

2.循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2010 年度合同研究班報告)- 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2011年改訂版)

3. Asian Society of Cardiovascular Imaging 2010 contrast media guideline for cardiac imaging. Int J Cardiovasc Imaging. 2010;26(Suppl 2):203-12.

4. Asian society of Cardiovascular Imaging 2010 standardized practice protocol for cardiac magnetic resonance imaging: Int J Cardiovasc Imaging. 2010;26(Suppl 2):187-202.

5. Asian Society of Cardiovascular Imaging 2010 appropriateness criteria for cardiac magnetic resonance imaging:. Int J Cardiovasc Imaging. 2010;26(Suppl 2):173-86.

6. Asian Society of Cardiovascular Imaging 2010 appropriateness criteria for cardiac computed tomography: Int J Cardiovasc Imaging. 2010;26 Suppl 1:1-15.

7. 日本医学放射線学会 画像診断ガイドライン 2013

8. 日本医学放射線学会 画像診断ガイドライン 2016

 

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